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【霧笛】(むてき) 霧中信号の一。 霧が深い時に、船舶や灯台・灯船がその位置を知らせるために鳴らす(汽) 笛。きりぶえ。 《広辞苑・第五版》 ボー・・・、 ボー・・・ 海辺に生活していると、霧の中からこんな音が聞こえてくることがありまし た。今わ懐かしい霧笛の音です。 本日は12月20日、「霧笛記念日」ということで今では懐かしい存在になって しまった「霧笛」というノスタルジーにあふれる言葉を採り上げました。 船、港、霧、霧笛 とくれば一昔前の演歌なら一曲か二曲分の歌詞が出来上がってしまいそうな 言葉の組み合わせ。そのため霧や霧笛という言葉にロマンチックな連想をな さる方もいるかも知れません。 しかし実際に船を操る人からすれば霧は迷惑なものです。 海霧は、冷たい海水の上に湿った暖かい空気が流れ込んだ場合によく発生す る霧で、海の上、あるいは海辺では春から初夏の頃によく発生します。発生 するとなかなか晴れない海上を行き交う船にとっては迷惑な霧です。 霧笛は、霧によって視界が閉ざされた船に灯台などがその位置を知らせるた めに発する音です(注1)。 現在のように GPSやレーダーが使えなかった時代には、船に灯台の位置を知 らせる一番の方法は光。しかしその光が濃い霧の中では遠くまで届きません ので、そんなときに活躍したのが音による信号。霧笛はそうした音響信号の 一つでした。深い霧に海が閉ざされるような日には、「ボー、ボー」と霧笛 の音が断続的に聞こえていました。 「私はここ、ここにいるよ」 霧笛の単調な音にのせて、霧の中から呼びかける音でした。 ※注1 海上保安庁が管理する灯台等設置されていた霧笛はに2010年 3月31日をもっ て全て廃止されました。陸上施設としての霧笛は現在は民間設置のものが若 干残っています。また、船舶が霧の中で発する汽笛は現在も有効な音響信号 として使われています。
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