日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■竹笋生ず (七十二候の一つ) 「竹笋生ず(ちくじゅんしょうず)」は「竹のこ生ず」の意味です。 二十四節気、立夏の末候。七十二候全体としては21番目で、清々しい初夏の 頃の言葉で、5/16~5/20頃がこの候の時期となります。 七十二候の言葉は中国から日本に伝わった後に、日本風に改変されたり、創 作されたりしたものがあります。今回の「竹笋生ず」も、そうした日本に来 てから創作された言葉の一つです。 ちなみに「竹笋生ず」で「たけのこしょうず」と読むこともあります。 「笋」は「筍」の異字体で、「竹笋生ず」が正式な文字なのですが、現在で はこの文字で「竹のこ(筍)」の意味だと分かる人はまずいないでしょうか ら、こよみのページでは意味優先で 「竹のこ生ず」 と書き表しています。ただし今回の説明の中では本来の「竹笋生ず」の文字 を使わせていただきます。 ◇王瓜生(おうかしょうず) 「竹笋生ず」は日本で作られた言葉だと書きましたが、中国から七十二候が 導入された時には、ここには「王瓜生」という言葉が入っていました。 「王瓜」とはカラスウリのことで、中国では、この根、種子ともに漢方薬と して用いられた植物です。 中国の周の時代に成立したという書物である礼記(らいき)の月令(がつり ょう)には「王瓜生ひ、苦菜秀づ」という一文がありますから、カラスウリ は古くからなじみのある植物だったようです。 カラスウリは日本でも普通に自生している植物で、夏の頃にちょっと変わっ た形の白い花を咲かせ、秋にはその実が黄色や赤に色づいて目をひくように なる植物です。夏に花を咲かせることから、きっと今頃の時期に芽が出て成 長してゆく植物なのでしょうが、実が色づくまではあまり目立ちません。 ◇日本ではタケノコ 七十二候の言葉には沢山の動植物の名が入っているのですが、日本には存在 しない植物などもあって、そうしたものは日本にある別のものに置き換えら れました。 しかし、既に書いたとおりカラスウリは日本でもありふれた植物であるにも かかわらず、「王瓜生」が「竹笋生ず」に置き換えられたのでしょう? この理由ははっきりしないのですが、強いて考えれば日本では、カラスウリ は中国ほど利用される植物ではなく、それより初夏の食材として親しまれる 「タケノコ」の方が、季節感をよりよく表せるものだと考えたからではない でしょうか。 どうして切り替わってしまったのかははっきりしませんが、現代でもタケノ コの生え出す季節といえば、ああそんな時期かと判りますが、カラスウリが 生え出す時期ですといわれてもなかなかピントは来ませんから、カラスウリ をタケノコに置き換えた人の意図は成功したと言えるでしょう。 現在私が住んでいるところは、比較的温暖な地方ですのでタケノコが生え始 める時期は「竹笋生ず」の時期より半月以上早く、筍は既に立派な竹になり つつあり、「生ず」という段階ではありませんが、生まれ故郷の東北南部辺 りでは、「竹笋生ず」は頃合いの言葉だろうと思います。 もしかしたら、関東以北あたりの方々の中には、「晩のおかずはタケノコ」 という方もいらっしゃるかもしれませんね。
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